ラムセス2世のオベリスク (カイロ国際空港) オベリスク全リストへ戻る

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現在地:  エジプト、ヘリオポリス、カイロ国際空港第1ターミナル前
北緯
30°07′28.9″(30.124689) 東経31°24′02.5″(31.400689)
創建王:  ラムセス2世(新王国第19王朝,在位,紀元前13世紀)
高さ:  17.0メートル
石材:  赤色花崗岩

場所について:
 オベリスクが立っている場所は1984年に整備された所で、カイロ国際空港の第1ターミナルの前になります。周囲にはフェンスがあり公園のような広場になっていますが、北側の入口には鍵がかけられていて、無人のようで立ち入ることはできません。オベリスクの下には、台座というにはあまりにも立派過ぎる建造物が建てられています。なるべくオベリスクを高く見せたかったのだとは思いますが、ここまでする目的や意図は分かりません。

カイロ空港前のオベリスク カイロ空港前のオベリスク

 エジプトの玄関口のカイロ空港の前にオベリスクを建てるという着想自体は理解できます。しかしながら実行のされ方がいかにもお粗末です。それなりの巨費を投じて台座の建造物は作られたのでしょうが、空港の建物からかなり離れているので、そもそも目立ちませんし、信号も無い道路を横断してまでここを訪れる人はまず居ないでしょう。このため公園のように整備されている敷地も閉鎖されたままで、結局何の役にも立っていません。
 オベリスクが建っている敷地の北側と西側は道路に面していて、東側は航空会社関連の建物への通路になっています。Google mapでは東側の建物はNile Airticket reservation officeとなっていますが、ここに予約に来る一般人は居ないと思います。通路にはゲートがあり、車は入れませんが歩行者は立ち入ることができます。筆者はカメラを下げてオベリスクの写真を撮っていましたが、この施設の関係者から声は掛けられませんでした。このため、フェンス越しにはなってしまいますが、東、北、西側からはオベリスクの写真が撮れます。しかしながら、南側は広大な敷地になっていてオベリスクが離れている上に、敷地内を立体交差のための高架道路が横切っていますので、オベリスクの下部が高架道路によって遮られた写真しか撮ることができません。

行き方:
 エジプトに陸路で来る人は滅多に居ないでしょうから、大部分の旅行者はカイロ国際空港からエジプトに入国するものと思われます。しかしこのオベリスクの存在に気付く人はほとんど居ないでしょう。オベリスクの建っている場所は確かにカイロ国際空港の第1ターミナルの前なのですが、出発、到着のビルの目の前にあるわけではありません。また空港の拡張によって現在の国際線は主に第3ターミナルを使用していますが、第3ターミナルからはオベリスクはかなり離れているので見えません。
 オベリスクを探すのであれば、最も分かり易い場所は空港の近くのホテルであるル・パサージュ・カイロ・ホテル&カジノか、ノボテル・カイロ・エアポートです。ル・パサージュ・カイロ・ホテル&カジノの入口の正面であれば高架の道路越しにオベリスクが見えます。ル・パサージュの東側に隣接するノボテルの場合には入口から見て左斜め前にオベリスクが見えます。
 カイロ国際空港はカイロ市内からかなり離れている上に、空港と市内を結ぶ公共交通が整備されていないので、わざわざオベリスクを見るために市内から向かうのは得策ではありません。個人旅行であれば、カイロ空港に着いたときか、カイロ空港から出発する時に立ち寄れれば、それに越したことはないでしょう。カイロ国際空港は治安上の理由から手荷物の一時預かりが取り止められていますので、お勧めなのはホテルに荷物を預けてオベリスクを見に行く方法です。ル・パサージュよりはノボテルは庶民的らしいので、筆者はノボテル・カイロ・エアポートのフロントに荷物を預けました。ホテルに宿泊しなくても「食事をするので預かって」と言えば、嫌な顔もせずに無料でスーツケースを預かってくれます。荷物の素性と本人確認用にパスポートのコピーをとるなど、管理もきちんとしていました。なお、ノボテル・カイロ・エアポートと第3ターミナルの間には無料のシャトルバスが運行されています。

オベリスクについて:
 ナイルデルタのタニスの遺跡にあったラムセス2世(在位 紀元前1278~1212)のオベリスクです。タニスの遺跡にある石材は、ほとんどがラムセス2世が建設したペル・ラムセスから運び出されたものなので、本来はペル・ラムセスにあったものだと思われます。高さは英文のWikipediaでは16.97mとなっていますが、このオベリスクを現在の地に建設することを報じたUPI電では63フィート(約19.2m)となっています。
 このオベリスクは大きく二つに割れて断片になっていたものを補修したことが分かります。頂上部も補修されていますが、先端は尖がり過ぎていてやや不自然な形状になっています。また、最下部はレリーフが途中で途切れているので、欠損した部分が修復されずに再建されたことが分ります。碑文はきれいに残っており、ラムセス2世のホルス名、即位名、誕生名の順に碑文が書かれていますが、ホルス名は4面それぞれ異なった表記法で書かれているのが特徴です。
 同じようにタニスの遺跡から運ばれてきたゲジーラ島のオベリスクと高さは似通っていますが、二つを見比べてみると、ゲジーラ島のオベリスクはラムセス2世のホルス名が4面共通の表記法なので、このオベリスクとは対ではないことがわかります。柱の形状もこちらの方が細身のようで、タニスのアメン大神殿の遺構に入ってすぐの所に倒れて残っているオベリスクとペアのものではないかと筆者は考えています。
 

撮影メモ:
 オベリスクの建っている広場は立ち入りができないので、非公開としても良いのかもしれませんが、壁で隠されているわけではなく、フェンス越しではありますが写真撮影はできるので、非公開とは扱いませんでした。しかしながら公開方法としてはいかにも中途半端で、とても残念でした。2014年に筆者が訪れた時には日没寸前で、オベリスクは赤みがかった写真しか撮れなかったので、2016年4月に再訪しました。またこの時には空港からヘリオポリスのオベリスク経由でカイロ市内に向うために専用車を手配したので、地上からだと立体交差の道路で下部が遮られてしまう南面を、車でこの道路上を走ってもらって撮影することができました。写真は2016年に再訪した時のものに西面以外は入れ替えてあります。

cairoairport_east2.jpg
東面

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北面

cairoairport_west.jpg
西面

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南面
西面は2014年8月6日、その他は2016年4月26日 撮影:長瀬博之 (画像をクリックすると高解像度の画像が見られます)

共同著作・編集: 長瀬博之 nagase@obelisks.org、岡本正二 okamaoto@obelisks.org