イタリアのオベリスク オベリスク全リストへ戻る

イタリア  ローマ帝国の時代には多くのエジプトのオベリスクがイタリアに持ち込まれました。また、元々エジプトの神であったイシス神がローマ帝国でも信仰されたことなどから、イタリアで作成されたオベリスクもあります。現在のイタリアにはオベリスクが立った形で残されている地域が7ヶ所あります。屋外に立っているところは首都ローマとバチカン市国、フィレンツェ、ラファエロが生まれた山間の街で世界遺産となっているウルビーノ、ナポリの北東にあるベネベント、シチリア島の第2の都市であるカターニアの5都市です。また、ボローニャ、ナポリにある博物館には屋内展示されているオベリスクがあります。
 18世紀初頭の画家のFrancesco Guardiはベネチアに建っていたオベリスクの絵を残しています。エジプト製ではないかもしれませんが、今では失われてしまっていて確認できません。おそらくイタリアにはローマ帝国の頃に作られたり、エジプトから運び込まれたオベリスクが他にも埋もれたままになっているのではないかと筆者は考えています。

ローマ市内およびバチカン市国

 ローマ市およびバチカン市国には古代のオベリスクが合計13本立っています。このうちヒエログリフの碑文があるものは10本です。碑文によってエジプトから持ち込まれたものであることが確認できるのは、現存するオベリスクの中では世界最大のラテラン・オベリスクなど7本で、他にローマ皇帝の名前が彫られているものがナヴォーナ広場とピンチョの丘に立っています。また、スペイン階段を登ったところにあるトリニタ・ディ・モンティ広場には、エジプト産のポポロ広場のフラミニオ・オベリスクを真似て作ったオベリスクが立っています。
 さらに碑文の無いオベリスクは3本あります。そのうちの1本はバチカン市国のサンピエトロ広場の中央に立っている有名なバチカン・オベリスクです。他の2本はエスクイリーノ広場とクイリナーレ広場にあります。碑文は無いのですがローマ帝国時代の文献に由来が書かれているので、古代のオベリスクであることは確認されています。

フィレンツェ

 フィレンツェのビッティ宮殿の裏側は広い庭園になっていて、ボーボリ公園と呼ばれていますが、この公園の中にエジプトで作られたラムセス2世のオベリスクが立っています。クラウディウス帝の頃にローマに持ち込まれたものです。16世紀に発掘されたあとにはローマ市内のメディチ家の庭園に立てられましたが、18世紀に現在の場所に移築されました。
 この他にフィレンツェの国立考古学博物館には、1本のローマ時代に作られた高さが1.73mのオベリスクが展示されています。なお、2本の小型の古代エジプトのオベリスクがあるとの情報もあるのですが、国立考古学博物館ではそれらしいものは確認できませんでした。

ウルビーノ

 ウルビーノはラファエロが生まれた街として知られる歴史のある小都市で、フィレンツェの東側約110kmの山間部にあります。ウルビーノには1483年に誕生したラファエロの生家なども現存しており、ルネサンス期の街並みが残っているため、1998年には世界遺産「ウルビーノ歴史地区」に指定されています。
 丘の上に広がるこの小さな町にもエジプト産のオベリスクが1本残っています。元は1世紀末頃にローマに移築されたオベリスクで、17世紀に発掘されたのですが、保存状態が良くないためかローマ市内での再建は見送られ、ローマ教皇クレメンス11世が故郷のウルビーノに寄贈したものです。

ベネヴェント

 ベネヴェントはナポリから北東に60kmほど行ったところにある山あいの都市です。古代ローマ時代にはアッピア街道の要衝で、トラヤヌス帝の凱旋門や劇場などの遺跡が残っています。また古代ローマの頃にはイシス信仰が盛んでイシス神殿が建てられましたが、そこには2本の対のオベリスクが立っていました。発掘された2本のオベリスクのうちの1本は修復されてパピアーノ広場に立っており、他の1本は断片がつなぎ合わされた状態でサンニオ博物館内に展示されています。

カターニア

 カターニアはシチリア島の東部にあり、パレルモに次ぐシチリア島第2の都市です。紀元前8世紀頃にギリシャ人の殖民都市として作られましたが、紀元前263年にローマに占領されました。1669年のエトナ火山の噴火と1693年の大地震によって町は壊滅的な被害を蒙り、18世紀にバロック様式の街並みが作られました。2002年には世界遺産「ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々」の一部にカターニアの街並みが指定されています。カターニアの町の観光の中心はドゥオーモ広場で、観光バスもこの広場から出ていますが、広場の中心に「象のオベリスク」が立っていて、カターニアのシンボル的な存在になっています。

ボローニャ

 ボローニャはイタリアの北部にある大都市で人口は37万人です。エトルリアの頃から町は作られていたようですが、現在の街は紀元前189年にローマの殖民都市として建設されたボノニア(Bononia)に始まっています。主要な街道が交差する交通の要衝であるため、街は急速に発展しローマ帝国でローマに次ぐ規模の都市になっていた時期もあります。ボローニャには市立の考古学博物館があり、エトルリアとエジプトなどの充実した収蔵品があり、イタリアの古代のコインの収集でも有名なようです。この博物館にはラムセス10世の小型のオベリスクが展示されています。

ナポリ

 ナポリはイタリア南部の大都市で、ローマ、ミラノに次ぐイタリア第3の都市です。古くから港湾都市として栄えました。旧市街地は「ナポリ歴史地区」として1995年に世界遺産に指定されています。ナポリには国立考古学博物館があります。イタリアの名門貴族であったファルゲーゼ家が蒐集した、古代ローマ・ギリシャ関連の膨大なコレクションを中心に展示が行われていますが、エジプト美術の展示室もあって、そこには古代ローマと古代エジプトのオベリスクの断片があると国立考古学博物館のウェブサイトには記述があります。しかし、2015年の春に筆者が現地を訪れた時には、国立考古学博物館は改装工事中で、オベリスクの展示室は非公開となっていました。ナポリの国立考古学博物館は運営に問題があるようで、展示自体に熱心ではなく、ごく一部の展示品が公開されているのに過ぎない状態でした。おそらく今後も長期間公開されないのではないかと思います。