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ヴィラ・メディチのオベリスク
現在地: | ローマ、ヴィラ・メディチ 北緯41°54′31.8″(41.908839) 東経12° 28′59.5″(12.483182) |
創建王: | 複製品 |
高さ: | オベリスクのみ約4.8メートル(推定) |
場所について:
ヴィラ・メディチは「メディチ家の別荘」という意味です。フィレンツェを中心とするトスカーナ公国の統治者であったメディチ家が、1576年にローマでメディチ家の権勢を示す目的で購入した土地です。場所はローマのボルゲーゼ庭園の南西側で、スペイン階段上の広場からピンチョの丘に向うトリニタ・ディ・モンティ通り(Viale della Trinita dei Monti)沿いにあります。
ヴィラ・メディチには古代ローマ風の美術品が庭園に飾られていました。現在はフィレンツェのボーボリ庭園に立っているラムセス2世のオベリスクも、16世紀にローマのミネルヴァ広場の近くで発見された後は、ヴィラ・メディチに建てられたのです。その後多くの美術品はフィレンツェに運ばれ、1790年にはラムセス2世のオベリスクもフィレンツェのボーボリ庭園に移されました。
ヴィラ・メディチは、1737年にメディチ家が絶えると、トスカーナ公国の後を継いだロレーヌ家の所有となります。さらにナポレオンのイタリア侵攻後には、ナポレオン・ボナパルトの所有となり、1803年に在ローマ・フランス・アカデミーに移管されました。第2次世界大戦中の1941年にムッソリーニ政権下のイタリア政府によって接収されましたが、1945年にフランス・アカデミーに返還され、現在に至っています。
ヴィラ・メディチのオベリスク |
行き方:
スペイン階段上のサルスティアーノ・オベリスクから、ピンチョのオベリスクが立っているピンチョの丘まではトリニタ・ディ・モンティ通りがコースとなりますが、ヴィラ・メディチの入口があるメディチ邸の建物はトリニタ・ディ・モンティ通りに面していて、サルスティアーノ・オベリスクからは200mほどです。なので、サルスティアーノ・オベリスクとピンチョのオベリスクをみるついでに立ち寄るのも一案です。地下鉄の最寄駅はSpagna駅です。
ただし、ヴィラ・メディチは個人が自由に参観することはできず、開始時間が定められたガイド付きのツアーに参加して、団体行動をとる必要があります。ヴィラ・メディチは在ローマ・フランス・アカデミーが所有していることから、ツアーの主体はフランス語ガイドのもので、次がイタリア語です。英語によるツアーは1日わずか1回、12時開始の回しかありません。ですから他のオベリスクと併せて見るには、予めスケジュールを立てて置く必要があります。なお、ヴィラ・メディチの参観ツアーは月曜日を除く毎日開催されていて、チケットはメディチ邸の建物内で購入でき、予約の必要はありません。英語以外のツアーの開始時刻や回数は季節によって変動しますので、ヴィラ・メディチのウェブサイトを参照して下さい。
オベリスクについて:
このオベリスクは、元になったラムセス2世のオベリスクがフィレンツェのボーボリ庭園に運ばれた後に、そのレプリカとして作られたものです。作られたのは19世紀と言われているので、1803年からヴィラ・メディチを管理しているフランス・アカデミーによって発注されたものと考えられますが、それを裏付ける資料は見つけることができませんでした。
元のオベリスクとこのレプリカの碑文を比較してみたところ、ボーボリ庭園のラムセス2世のオベリスクの北面が、ヴィラ・メディチのオベリスクの南東面と同一であることが分りましたが、型を取って複製したような安易な作り方ではなく、赤色花崗岩に同一の碑文を彫り直した、丁寧に作られたものであることが分りました。ヴィラ・メディチのレプリカの大きさを示す資料も見つけることができませんでしたが、元のオベリスクに忠実に作られているので、大きさもほぼ同じ4.8m前後と筆者は推定しています。
撮影メモ:
ヴィラ・メディチを訪れた多くの観光客は、レプリカという説明を受けなければ、このオベリスクを本物と思い込むはずです。それほど、ヴィラ・メディチの場所柄と精巧なレプリカとは、ごく自然にマッチしています。筆者が参加したツアーでは、このオベリスクがレプリカであるという説明はありませんでしたが、庭園内を移動している際に、ガイドの方に「レプリカでしょう?」と尋ねたところ、「その通り、本物はボーボリ庭園にある」という明快な答えが返ってきました。
なお、ヴィラ・メディチの正面は南西を向いているため、このオベリスクも東西南北の方位からかなりずれた方向に向いています。下記の写真では北西、南西、南東、北東と表記しています。
北西面 |
南西面 |
南東面 |
北東面 |
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2016年5月3日 撮影:長瀬博之 (画像をクリックすると高解像度の画像が見られます) |
共同著作・編集: 長瀬博之 nagase@obelisks.org、岡本正二 okamaoto@obelisks.org