|
新行政首都のオベリスク
|
|
|
| 現在地: | エジプト、新行政首都、City of Art and Culture 北緯30°00′54.8″(30.015220) 東経31°43′21.1″(31.722528) |
| 創建王: | ラムセス2世(新王国第19王朝,在位,紀元前13世紀) |
| 高さ: | 不明 |
| 石材: | 不明 |
場所について:
新行政首都(New Administrative Capital)は、2015年より中国からの借款などによって建設が進められている新しい都市です。カイロから東方約40kmほどの砂漠の中に建設が始まりました。2025年1月に現地を訪れた際には、主要官庁や官吏のための住宅なども建設が進んでいましたが、まだ一部の官庁のカイロからの移転が始まったばかりでした。建物自体は出来上がっているのですが、転勤した職員は一部にとどまり、空家同然になっているのです。
この新行政首都には"City of Art and Culture"と名付けられた一画があり、オペラハウス、首都図書館、首都博物館があります。オペラハウスは稀に公演が行われるようですが、博物館の公開は限定的で、図書館も未公開と見られます。何しろ現地を訪れて最も驚いたのは、実際には高い塀で囲まれていて、オペラハウスなどの建物には近づくことさえできなかったことです。これではこのエリアの公開はだいぶ先かもしれません。
![]() オペラハウスの両側に立つオベリスク。左側は小さく辛うじて見える。2025年1月には道路際には壁が建設されていた。 |
このオペラハウスは南北に拡がる幅が500mほどもある壮大な建築物なのですが、その両端にはオベリスクが建てられていることが、City of Art and Cultureを宣伝する動画などで確認できます。事前に得ていた情報からは、2本ともラムセス2世のオベリスクで、サンエルハガルから運ばれたものが1本と、以前はカイロ空港前にあった1本であるものと筆者は考えていました。
行き方:
筆者が現地を訪れた際には旅行社の手配した専用車で移動しましたが、電車で行き着くこともできます。カイロ中心部からは地下鉄3号線(Green Line)で、終点のアドリー・マンスール駅まで行き、そこで2022年に開業したライト・レール・トランジット(LRT)に乗り換えれば、終点がArts and Culture City駅で、オペラハウスはまさにその駅の正面(西側)に位置しています。
写真ではオペラハウスは道路に面した開放的な雰囲気で建てられているように見えるのですが、実際に2025年1月に現地を訪れた時には、オペラハウスなどの敷地と道路の間には高い壁が建設されていて、内部も見ることができず、建物にも近づけませんでした。ただし、LRTの駅は高架なので、駅からは壁越しにオベリスクを遠望できる可能性はあります。しかし、「地下鉄からLRTに乗り換えて」と書くといかにも近そうですが、調べて見ると実際にはカイロのSadat駅からだとArts and Culture City駅までは片道2時間近くかかるようです。また、40km以上も離れているの専用車をチャーターしても時間は大差はなく、気軽に行けるという距離ではありません。
![]() 上が首都博物館、下が首都図書館。外観は同じに建造されているのでロゴを見ないと区別がつかない |
オベリスクについて:
なにしろ、筆者が訪れた2025年1月には、オペラハウス周辺は壁がつくられて立入り禁止でしたので、オベリスクの写真を自分で撮ることはほとんどできませんでした。しかし、新行政首都をエジプト政府が宣伝する目的の動画や報道記事があって、オベリスクの画像は少しはみつかりました。ところが、動画に映り込んでいるオベリスクが、果して右側の博物館前のものなのか、左側の図書館前の物なのかの同定がなかなか難しいのです。というのは博物館と図書館の外観が同じで、ロゴの位置や前に置いてあるものなどでしか区別がつかないからです。
●オペラハウスの右側のオベリスク
まず、オペラハウスの右側(北側)には首都博物館があるのですが、その正面に立っているオベリスクは、私が塀越しに撮った写真で一面だけですが碑文のはっきりわかるものがありました。形状はカイロ空港にかつてあったオベリスクに似ているので、残っている4面の写真と比較しましたが、どうも異なっているようで、カイロ空港から持ってきたものではないと断定しても良いものでした。また、City of Art and Cultureを紹介する動画にも博物館側のオベリスクが写っていました。不鮮明で碑文は判読できませんが、大きく五つのブロックに分かれていたものを繋いだ継ぎ目が判ります。これもカイロ空港にあったオベリスクとは全く異なった特徴でした。
![]() 左側のオベリスクの先端部 |
●オペラハウスの左側のオベリスク
オペラハウスの左側(南側)には首都図書館があり、こちらにもオベリスクが建てられていますが、このオベリスクは塀のために撮影することは全くできませんでした。このため、首都図書館を紹介する動画や、首都図書館を訪れた人による投稿写真からしか情報を得ることはできませんでした。ところが動画の中には、ドローンを使用してオベリスクの先端部を越えながら図書館に近づいていく場面があり、先端部の状況が判るものがあったのです。画像自体は鮮明ではないものの、彫刻はかなり深く、良好な保存状態で残っていることが判りました。カイロ空港のオベリスクは先端部分が壊れて金属キャップで整形していましたので、これは明確な相違点です。
ということでオペラハウスの左右のオベリスクは両方ともに、カイロ空港にあったオベリスクが運ばれてきたものではないことが、画像からははっきりしたのです。それでは、カイロ空港のオベリスクは、一体どこに運ばれたのか? 調べて見ると、エジプトの新聞社Yum 7のサイト(アラビア語)に、オベリスクは2022年の8月中旬に撤去され、「大エジプト博物館に移され、収蔵されることになった」との記事がありました。ただし、この記事も大エジプト博物館前に別のオベリスクを建設した事実と混同している可能性もあり定かではありません。なぜ、17mもあるオベリスクを展示もせず、倉庫に眠らせたままにしてあるのか、という素朴な疑問も生じますが、その理由も報じられてはいませんでした。
撮影メモ:
現地を訪れて、事前に見ていた"City of Art and Culture"の開放的な風景とは異なって、塀が建てられていたのには落胆しました。この新行政首都には、建前としてはカイロから中央省庁は移転してくることになっているのですが、2025年1月に訪れた時には工事関係者以外には人の気配はほとんどありませんでした。建物は確かに出来てはいるのですが、カイロ中心部からは鉄道で2時間近くかかり、新行政首都ではバスなどの交通網がまだ未整備で、商店もなく、マンション群はありますが住民がいる気配もないという状態なので、これが数年のうちに都市として機能するには、公務員を強制的に異動させ、商店などの生活インフラも半強制的に整備でもしなければ、発展は難しいと思いました。2027年に再訪の予定ですが、さてどう変わっているでしょうか。
北側のオベリスク(写真1) |
![]() 北側のオベリスク(写真2) |
![]() 南側のオベリスク(写真3) |
![]() 南側のオベリスク(写真4) |
|||
写真1は2025年1月12日、撮影:長瀬博之(画像をクリックすると高解像度の画像が見られます)
| ||||||
共同著作・編集: 長瀬博之 nagase@obelisks.org、岡本正二 okamaoto@obelisks.org