象の噴水のオベリスク (別称:カターニアのオベリスク) オベリスク全リストへ戻る

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現在地:  イタリア南部シチリア島、カターニア、ドゥオーモ広場
北緯
37°30′09.0″(37.502493) 東経15° 05′13.5″(15.087091)
創建王:  不明
高さ:  オベリスクのみ 3.66 メートル
石材:  赤色花崗岩か

場所について:
 カターニアはシチリア島のパレルモに次ぐ第2番目の都市で、人口は29万人です。2002年に、シチリア島の東南部にある8つの町が、『ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々』として、一括してユネスコの世界遺産に指定されました。カターニアもそのうちのひとつで、世界遺産になっています。
 カターニアは紀元前8世紀にギリシャの植民都市としてできた街ですが、近くにあるエトナ火山の噴火や地震によって何度も被災しています。最近では 17世紀後半の噴火と地震によってカターニアの街は大きな被害を受け、18世紀になっていま見られるようなバロック様式の美しい街並みに整備されました。古い建物も随所に残っていますが、エトナ火山の溶岩の黒い岩石を利用した建物が見られます。
 シチリア島といえばマフィアを連想します。実際、カターニアはかつてマフィアの抗争の舞台となり、1990年代には治安の悪さで知られていました。しかし世界遺産に指定された後は見違えるように綺麗になったそうです。ミラノなどよりは治安もよく安心して歩ける街のように思いました。
 オベリスクの立つドゥオーモ広場はカターニアの中心地です。この広場から北に伸びるエトネーア通りがカターニアのメインストリートです。ドゥオモ広場は観光客向けの交通機関の出発点になっていて、市内観光用のミニトレイン、有名なリゾート地であるタオルミーナを回る観光バスなどがこの広場から出ています。

catania_duomo.jpg ドゥオーモ広場に建つオベリスク
うしろはドゥオーモ(サンタガタ大聖堂)
黒い象はドゥオーモに向いている


行き方:
 カターニアには鉄道でも行けますが、かなり長時間になりますので、ローマからであれば便数の多い航空機の利用をお勧めします。カターニアの空港からカターニア市内、ドゥオーモ広場へはタクシーか路線バスを利用します。
 路線バスは Alibus という市バス(457系統)が運行しています。カターニアの空港を降りたらバスの乗り場まで歩き、バス停の手前にある切符売り場で乗車券を買います。2014年8月に訪れたときには運賃はわずか1ユーロでした。安いのですが、バスの車両はリムジンではなく普通の路線バスですので、大きなスーツケースがあると厳しいです。バスに乗るときに運転手にドゥオモ広場に行きたいと伝えておきましょう。カターニアの人々はイタリア人の中でも気さくで親切なことで知られているようです。筆者の場合も「駅まで行くと遠いから途中で教えてあげるよ」と運転手は請け負ってくれ、近くのビスカリ宮殿付近のロータリーで降ろしてもらいました。カターニアの鉄道駅まで行ってしまうとドゥオーモ広場からは 800mほど離れてしまいます。
 なお、カターニアの空港は市内からさほど遠くはなく、タクシー料金は 30ユーロくらいです。市内では空港へのバス乗り場が探しにくいので、市内から空港へはタクシーが便利だと思います。

liotru.jpg 東を向く黒い象の彫像

オベリスクについて:
 このオベリスクは4隅が削られていて、断面は8角形をしています。ヒエログリフの碑文はありませんが、エジプト風の人物像などが線刻されています。イタリアのウェブサイトでは「これはエジプト製のオベリスクで、イシス女神の像が彫られている」と紹介しているものを見かけます。しかし、エジプトで彫られたものであれば、そもそも断面が8角形のオベリスクというのは考えにくいですし、図柄ももっとエジプト古来の様式に忠実に則ったものになると思われます。
 このため、多くのオベリスクの専門書では、このオベリスクはローマ帝国時代にシチリア島で作られたものだろうと推定されています。オベリスク本体の高さは 3.66mと小型です。
 なお、材質はアスワン産の赤色花崗岩と似た感じですので、イスラエルのカイザリアのオベリスクと同じように、石材はエジプトから運ばれてきたものである可能性はあります。
 このオベリスクは「噴水」と「黒い象の彫像」の上に建てられています。
 「黒い象の彫像」はエトナ火山の溶岩でできており、いつ誰が作ったのか記録が残っていませんが、かなり古いもののようです。ローマ帝政時代の頃にチルコマッシモ(古代競技場)に置くため作られたとか、現存しない或る宗教の記念物だとかの説がありますが、正確なことはわかっていません。しかし、すでに 1239年にはカターニアのシンボルとされ、地元では「liotru」(リオトル、シチリア語で象)と呼ばれ、市の紋章、大学の徽章や地元サッカーチーム「カルチョ・カターニア」のマークにもあしらわれています。また市庁舎は窓の周りに小さな象のレリーフがあり「象の宮殿」と呼ばれて親しまれています。要するに、象はカターニアの人々にとってマスコット的な存在なのです。
 黒い象の土台となっている「噴水」は、18世紀に広場が整備されたときに、ジョヴァンニ・バチスタ・ヴァッカリーニ(Giovanni Battista Vaccarini)という建築家が、1693年の地震で損傷していた「黒い象の彫像」に白い大理石で目と牙を補い、それを噴水と組み合わせ、さらにベルニーニ作の ミネルバの象(ローマ) を真似て、象の上にオベリスクを載せました。1736年の完成です。
 南と北の両側から噴き出る水はカターニアの二つの川(シメト川とアメン川)を再現しているとのことです。1757年には噴水の周りに水池が補足され、1905年、その周りに噴水がとりまくさらに大きい池と植栽が設けられたが、1998年には取り除かれ、3段の石段に替えられました。従って、いまでは周りに腰掛けて一休みすることができます。
 Google で Liotru を検索しますと、シチリア語で記述されたページ が出てきます。ただ、シチリア語は Google の機械翻訳ができませんので、Fontana dell'Elefante というイタリア語のページが詳しくて良いでしょう。
 オベリスクの頭頂部には椰子(しゅろ)とオリーブの葉っぱで取り囲まれた球が乗っています。その上に聖アガタ(サンタガタ)に捧げられた金属板があり「MSSHDEPL」(神の名誉のための健全な精神と誠実,および神の国の解放)と書かれており、さらにその上に十字があります。

撮影メモ:
 シチリア島の観光情報を掲載するあるウェブサイトには、「夏にはカターニアに来るべきではない」と書かれていました。タオルミーナを回る屋根の無いオープンバスに乗って来ましたが、確かに暑さは半端ではなく、日差しが非常にきつかったです。客が十分に集まるまではバスが出発しないので、早くからバスに乗って待っていた観光客は、暑さに耐えかねて出発前から怒りだすほどでした。ベストシーズンは6月頃だと地元の観光バスの係員は言っていました。

カターニアのオベリスク東面
東面

カターニアのオベリスク北面
北面

カターニアのオベリスク西面
西面

カターニアのオベリスク南面
南面

2014年8月14日 撮影:長瀬博之 (画像をクリックすると高解像度の画像が見られます)

共同著作・編集: 長瀬博之 nag2jp@ gmail.com、岡本正二 shoji_okamoto31@yahoo.co.jp