アメンホテプ2世のオベリスク オベリスク全リストへ戻る

大きな地図で見る          railway.gifは鉄道駅を表す記号です

現在地:  イングランド北部ダラム、ダラム大学内、オリエンタル博物館(屋内展示)
北緯
54°45′49.6″(54.763791) 西経1°34′52.8″(-1.581326)
創建王:  アメンホテプ2世(新王国第18王朝,在位,紀元前15世紀)
高さ:  オベリスクのみ 2.15 メートル
台座を含め 2.335 メートル
重さ:  オベリスクのみ 350 kg
台座を含め 430 kg
石材:  赤色花崗岩

場所について:
 ダラムは大聖堂とダラム城が1986年に世界遺産に登録された歴史のある街です。ダラム大学はケンブリッジやオックスフォード大学と同じように、複数のカレッジで構成されている総合大学です。設立は1832年の由緒ある大学で、現在は16のカレッジがあります。また帝京大学のダラム分校が開設されていて、校舎はオリエンタル博物館の向かいにあります。世界遺産であるダラム城は現在はダラム大学の学生寮として使用されています。

ダラム大学遠望 森に囲まれたダラム大学
駅から大学に向かう途中からの眺め
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 ダラム大学の オリエンタル博物館 は1960年に開設された比較的に新しい博物館です。古代エジプトのほかに中国、チベット、日本などの展示コーナーがありますが、規模はさほど大きくはありません。
 展示室に入ると派手な色に彩色された兵馬俑の陶俑の複製が置いてあるので驚きます。確かに兵馬俑で見た陶俑には微かに色が残っているものもありましたから、作られた当時は全身に着色されていたでしょうが、日本人の感覚ではちょっとついていけません。この博物館は地元の小学生が参観に訪れる場所にもなっていますので、子供にも分かり易くという配慮が働いているのだと思います。
 エジプトの展示室は2つの部屋で構成されていますが、目指すオベリスクは奥の部屋の中央に立っています。奥の部屋に向かって右側に、白色の石灰岩で作られた小型のオベリスクも展示されていますが、碑文は横書きで書かれており、カルトゥーシュは書かれていません。(下記参照、写真も掲載しています。)
 博物館の規模は大きくは無いので、じっくり展示品を見たとしても1時間半もあれば十分でしょう。筆者は参観後すぐにロンドンにとんぼ返りしましたが、オベリスクだけでなく世界遺産のダラム城やダラム大聖堂を訪れるのも良いかもしれません。

durham_museum.jpg  派手な彩色の兵馬俑の陶俑

ダラム大聖堂とハリー・ポッター 余談ですが、ダラム大聖堂はハリー・ポッターのロケ地となったことでも知られています。第1作でハリーがヘドウィック(フクロウ)を腕に乗せて雪の積もった中庭を歩くシーン、ホグワーツの廊下を歩くシーン、マクゴナガルの変身術の教室などにダラム大聖堂の施設が使用されています。そういえば、ホグワーツ特急が出る駅もキングス・クロス駅でした。ダラムまでの列車の待ち時間に筆者は駅構内を歩いてみましたが、実際のキングス・クロス駅の9番線と10番線は線路が隣接していて間にホームは無いので、4番線と5番線の間のホームがロケ地と思われます。

キングス・クロス駅 9 3/4番線  『キングス・クロス駅 9 3/4番線』
荷物カートの半分が壁に突っ込んでいる


 また、キングス・クロス駅にはハリー・ポッターのファンのために、改札口の外の一角に9 3/4番線の入口が作られていて、ちょっとした観光名所になっていました。記念撮影の順番を待つ大変な人ごみで、駅の職員も数名配置されていました。半分に切断したカートと荷物が置かれていて、鳥かごの中にはヘドウィックも居ました。写真の女性は筆者が通りがかったときにたまたま撮影していた人ですが、ファンに対するサービスも良く、グリフィンドール・カラーのマフラーの貸し出しなども行われている様子が分かります。

行き方:
 ダラムはロンドンの北方約 400kmにあります。距離の割には鉄道の便が良く、ロンドンのキングス・クロス駅から急行で行けば約3時間で着きます。ただしダラム駅はダラム市の中心から北西にやや外れたところにあります。
 オベリスクがあるオリエンタル博物館はダラム大学の広い構内にありますが、ダラム市の中心部から南に下ったダラム城が建つ丘の上にありますので、駅から徒歩ですと 40分くらいかかります。筆者は地図を片手にダラム市内を大学の方に向かって歩いていたところ、中国人の女子学生に「オリエンタル博物館に行くの?」と聞かれ、博物館まで案内してもらうことができました。独力で地図で場所を探しながらたどり着くのは結構大変だと思います。筆者は帰りは駅までタクシーを利用しましたが、料金は5ポンド程度でしたので、タクシーを使うことを勧めます。

オベリスクについて:
 このオベリスクはアスワンの町の正面にあるエレファンティネ島(エレファンティン島)で発見された、エジプト新王国時代第18王朝のアメンホテプ2世(在位 BC 1453-1419年)のものです。エレファンティネ島は古代エジプトでは第1ノモスの都が置かれた場所なのですが、いまではナイル川の水量を測るナイルメーターや波止場の廃墟以外にはあまり遺跡は残っていません。しかし王名が刻まれた石材が多数見つかっていて、その中にこのオベリスクが含まれていました。
 ノーサンバーランド(ダラムがあるイングランド東北部)の第4代公爵アルジャノン・パーシー(Algernon Percy、第4代公爵になる前はプルドー卿と呼ばれていた)という人物がいました。彼はエジプトをしばしば訪れ、古代エジプトの遺品を収集し「デューク・アルジャノン・コレクション(Duke Algernon Collection)」としていました。このオベリスクは彼が1838年の3回目のエジプト旅行中、エレファンティネ島を訪れた際、当時のエジプト総督ムハンマド・アリから贈呈され、彼のコレクションに加えられたものです。
 このオベリスクは1840年、「デューク・アルジャノン・コレクション」が保管されていたアニック・カースル(Alnwick Castle)の塔内に移されました。 アニック・カースルというのはノーサンバーランド公爵(パーシー家)の居城(邸宅)で、多くの塔で囲まれており、そのうちのひとつがコレクションの保管場所になっていたのです。
 ある時期、恐らく1870年代から1920年代の約半世紀、このオベリスクだけはロンドン市内西部ブレントフォード(Brentford)にあるサイオン・ハウス内の「ロバートアダムス大ホール」に置かれていました。サイオン・ハウスというのはノーサンバーランド公爵のロンドンにおける邸宅です。
 その後このオベリスクは再びアニック・カースルに戻され、1950年に「デューク・アルジャノン・コレクション」一式は近くのダラム大学に売却され、現在に至っています。
 このオベリスクの高さは2.15mで、碑文は一つの面にしか彫られていません。また、先端のピラミディオンと碑文は金色に彩色されているためアメンホテプ2世のホルス名、即位名、誕生名が鮮明に見えます。このオベリスクの金の彩色はあまりにも良く残っていますので、オリエンタル博物館では、アルジャノン公爵の手に渡った後に塗られたものと考えています。
 鮮やかな金色にヒエログリフが彩色されているオベリスクは他にはありませんが、古代エジプトでオベリスクが建てられた頃には、ピラミディオンの部分は金色に輝いていたと伝えられています。
 このオベリスクは2本ペアで作られましたが、もう片方はエレファンティネ島で民家の建材として利用されていたのが発見されました。1920年に回収されてカイロのエジプト博物館に収蔵されましたが、アスワンに ヌビア博物館 が開設されたときに同博物館に移されました。今ではヌビア博物館の庭園に展示されています。オリエンタル博物館のウェブサイトでは『ペアのオベリスクはカイロのエジプト博物館にある』と記載されていますが、ヌビア博物館に移されたという情報が伝わっていないためと思われます。

日本で公開 なお、このオベリスクは、日本で展示されたことがある唯一の古代エジプトのオベリスクでもあります。2008年にイートン・カレッジとダラム大学所蔵の古代エジプトの美術品を集めた「古代エジプトの美展」が、東京の古代オリエント博物館、熱海のMOA美術館、宇都宮美術館、浜松市美術館、名古屋の松坂屋美術館、大丸ミュージアムKOBEと巡回して開かれ、そこに展示されました。英国の報道では日本での参観者は 20万人、収益は6万ポンドに達したとのことです。

アメンエムハトの小型オベリスク 白色の石灰岩の小型の小型のオベリスクも上記の「デューク・アルジャノン・コレクション」に含まれていた収集品で、オリエンタル博物館のウェブサイトによると、中王国時代第13王朝(紀元前18世紀)のアメンエムハトのオベリスクとなっています。
 高さは75.5cm、重さは18kgです。白色で美しいことから、古代エジプトでも屋内あるいは墓室内に置かれていたものと思われます。出土地は上エジプト、アビドス(アビュドス)です。

撮影メモ:
 展示室は照明が暗いので、筆者は特に博物館の係員からオベリスクに限ってストロボ撮影の許可を得ることができました。アメンホテプ2世のオベリスクの碑文は1面にしかないので、他の面の写真は割愛します。
 代りにヌビア博物館の展示されているもう片方のオベリスクと、オリエンタル博物館にある小型のオベリスク(上記参照)の2面の写真を掲載しておきます。

durham_obelisk1.jpg
アメンホテプ2世のオベリスク
(ダラム大オリエンタル博物館)

amenophis2.jpg
アメンホテプ2世の対のオベリスク
(エジプト、ヌビア博物館)

durham_obelisk2a.jpg
小型の石灰岩のオベリスクの正面
(ダラム大オリエンタル博物館)

durham_obelisk2b.jpg
小型の石灰岩のオベリスクの右面
(ダラム大オリエンタル博物館)

ダラム大は2014年8月3日、ヌビア博物館は同年8月7日 撮影:長瀬博之 (画像をクリックすると高解像度の画像が見られます)

共同著作・編集: 長瀬博之 nagase@obelisks.org、岡本正二 okamaoto@obelisks.org