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エスクイリーノのオベリスク
現在地: | ローマ、エスクイリーノ広場(サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂裏) 北緯41°53′53.4″(41.898167) 東経12° 29′51″(12.4975) |
創建王: | 恐らく紀元1世紀頃のローマ人による模作 |
高さ: | オベリスクのみ 14.75メートル 台座を含め 25.53 メートル |
サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の正面 オベリスクは大聖堂の裏手にあります |
場所について:
オベリスクがあるエスクイリーノ広場は、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の裏手になります。サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂はローマの4大バシリカの一つで、4世紀に創建されました。その後何度も増改築が行われていて、14世紀には鐘楼が建てられ、18世紀にバロック様式のファサードが作られています。しかしながら古い建物が残されている部分もあり、身廊は5世紀の建物で旧約聖書を題材にしたモザイクが残っています。
1980年にはこの大聖堂など、ローマ市内にある歴史的建造物7か所が『ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂』として一括してユネスコの世界遺産に指定されました。従ってこの大聖堂は世界遺産です。
14世紀末にアヴィニョンの捕囚からローマ教皇がローマに戻った時点では、捕囚以前に使われていたラテラノ宮殿が荒廃していたので、一時的にサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂が教皇の宮殿として用いられたとのことです。
また、ナヴォーナ広場の「四大河の噴水」などで知られるジャン・ロレンツォ・ベルニーニの墓は、この大聖堂の中にあります。ナヴォーナ広場ではベルニーニの作品とオベリスクの組み合わせの見事な調和が見られますが、ここでも普通は気づかないですが、ベルニーニとオベリスクの組み合わせがあるわけです。
この場所は、ローマの七つの丘の一つであるエスクイリーノの丘の上になります。広場の名前は丘の名前に由来しています。ただし現在では整地されて「丘」と気づかないくらいで、しかも多くの建物が建っているため、広場から周囲が見下ろせるわけではありません。
行き方:
オベリスクがあるエスクイリーノ広場は、テルミニ中央駅前の広場からカブール(Cavour)通りを南西方向に 300m、4ブロックほど行ったところです。テルミニ駅から近いので歩いて行くのが良いでしょう。エスクイリーノ広場はサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の裏手になりますので、観光用のガイドブックではサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂を探すと分りやすいでしょう。
オベリスクについて:
このオベリスクは台座を含めた高さが 25.53m、本体部分が 14.75mあります。写真でも分かるように碑文はまったくありません。碑文が無いので由来は分かっていません。
このオベリスクは 1519年、アウグストゥス廟の付近で3つの断片に分かれて埋まっているところが発見されました。また、1781年にはもう片方のオベリスクも地中から発見されました。
従って、この2本のオベリスクアウグストゥス廟の何かの建物の入口に一対として建てられていたと思われるのですが、その付近では大きな建物の土台の跡は見つかっていないようです。
アウグストゥス廟は紀元前28年に建てられ、紀元1世紀末までのユリウス・クラウディス朝の皇族の墓所となっていたので、オベリスク自体は2本ともエジプト産の原石を使って紀元1世紀にイタリアで加工・作成されたものと考えられています。2本とも碑文がありません。
1519年に発見された方のオベリスクは、1587年に教皇シクストゥス5世の命によって現在の場所(エスクイリーノ広場)に建てられました。それがこのエスクイリーノのオベリスクです。
なお、1781年に発見されたもう片方のオベリスクは、いまローマ市内のクイリナーレ広場にあります( クイリナーレのオベリスク )。
このオベリスクをよく見ると、最上部のピラミディオンに相当する四角錘の部分が無く、石材を平らに切った状態になっていることが分ります。これはペアで作られた現在はクイリナーレ広場に立っているオベリスクと共通している点です。エジプト人にとってはピラミディオンは重要な意味を持っていましたが、古代ローマの人々にはそれは理解されていなかったのでしょう。このオベリスクが石材はエジプト産であっても、ローマ人の手によって作られたものであることが、この特徴からも分ります。
デンマークのエジプト学者の Erik Iversen は、アウグストゥス廟の2本のオベリスクは、アレキサンドリアのカエサリウムにアウグストゥス帝が移築した2本のオベリスク(現在はロンドンとニューヨークにあって『クレオパトラの針』と呼ばれているオベリスク)を模したものではないかと推察しています。
撮影メモ:
サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の荘厳な建物を背景にして立つオベリスクは、ローマ市内のオベリスクの中でも見応えのある1本であると思います。テルミニ中央駅からも近いので是非訪れてみてください。
なお、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の正面は南東を向いているため、このオベリスクも東西南北の方位からかなりずれた方向に向いています。下記の写真では北西、南西、南東、北東と表記しています。
北西面 |
南西面 |
南東面 |
北東面 |
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2014年8月11日 撮影:長瀬博之 (画像をクリックすると高解像度の画像が見られます) |
共同著作・編集: 長瀬博之 nagase@obelisks.org、岡本正二 okamaoto@obelisks.org