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大きな地図で見る          http://www.obelisk.co3.jp/metoro.gifは地下鉄駅を表す記号です

クイリナーレのオベリスク

現在地:  ローマ、クイリナーレ広場(イタリア大統領官邸であるクイリナーレ宮殿の前)
北緯
41°53′56.8″(41.899117) 東経12° 29′11.9″(12.486648)
創建王:  恐らく紀元1世紀頃のローマ人による模作
高さ:  オベリスクのみ 14.63メートル
台座を含め 28.94 メートル

場所について:
 クイリナーレ広場は、大統領官邸として使われているクイリナーレ宮殿の前にあります。ローマの七つの丘の中で最も高いクイリナーレの丘の上で、広場の名前は丘の名前に由来しています。広場の横のクイリナーレ宮殿は、1583年に教皇グレゴリウス 13世の夏の宮殿として建てられたもので、1871年にはイタリア王国の宮殿となり、現在は大統領官邸として用いられています。月曜日と木曜日以外はクイリナーレ宮殿の中が公開されています。以前は日曜日の朝だけでしたのでかなり長い行列ができていましたが、今では事前予約が容易にできるようになりました。また、以前は週1回だけだったのですが、ROME.NETによれば、大統領官邸の衛兵交代の儀式が今では毎日午後3時に行われていて、軍楽隊の演奏などもあります。このため、衛兵交代を見に訪れる観光客も多いようです。ただ、衛兵といってもバチカンやバッキンガム宮殿のような特殊な格好ではなく通常の軍服です。
 なお、クイリナーレ広場の西側は見晴らしの良い場所になっていてバチカンなどが遠望できます。

クイリナーレ宮殿とオベリスク クイリナーレ宮殿とオベリスク


行き方:
 クイリナーレ広場は、テルミニ駅からバスで行くのが最も楽で、64系統 Stazione San Pietro 行き、あるいは 70系統 Clodio 行きで Nazionale-Quirinale で降りれば 200mほどです。どちらの系統も 10分おきくらいに走っています。
 地下鉄ですとA線のバルベリーニ駅(Barberini)が最寄り駅になりますが、駅からは 500mくらいある上に登り坂なので、歩くと結構きついです。ただ、クアットロ・フォンターネ通りには国立古典絵画館となっているバルベリーニ宮殿がありますし、その先の四つ辻(クアトロ・フォンターネ)を右折しますと、小さいながらも非常に感動的なサン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂などがありますので、観光をしながら広場に向かうのも一興です。
 また、有名なトレビの泉からも 400m弱です。その場合はトレビの泉を背にして約 100mほどで四つ角に来ます。左側、それがダタリア通り(Via d. Dataria)という道であることを確かめて左折します。その先の幅の広い階段を上がると広い場所に出ます。それがクイリナーレ広場で、広場の右前方に馬と人物の彫像を配したオベリスクがあり、すぐわかります。

オベリスクについて:
 このオベリスクは台座を含めた高さが28.94m、本体の高さが14.63mあります。碑文はなく、エジプトから運ばれた原石を用いて、アウグストゥス廟に建てられた2本のオベリスクのうちの1本です。他の1本は エスクイリーノ広場 にあります。
 このオベリスクは 1781年にアウグストゥス廟の付近から三つに折れた状態で発見されました。修復作業に4年を費やし、1786年に教皇ピウス6世によって現在の場所に建てられました。
 このオベリスクはよく見ると、最上部のピラミディオンに相当する四角錘の部分が無く、石材を平らに切った状態になっていることが分ります。これはペアで作られた現在はエスクイリーノ広場に立っているオベリスクと共通している点です。エジプト人にとってはピラミディオンは重要な意味を持っていましたが、古代ローマの人々にはそれは理解されていなかったのでしょう。このオベリスクが石材はエジプト産であっても、ローマ人の手によって作られたものであることが、この特徴からも分ります。
 台座の左右には馬と人物の彫像があります。人物はギリシャ神話のカストルとポルックスの双子の兄弟で、ゼウス神の子供の意味の「ディオスクーリ(Dioscuri)」という名前で、二人一組で呼ばれることもあります。
 余談ですが、春に良く見えるふたご座はこの双子の兄弟に由来しています。星座では右側の2等星がカストル、左側の1等星がポルックスです。
 このディオスクーリの彫像はもともと4世紀初め頃にコンスタンティヌス帝の浴場に作られたもので、中世にこのクイリナーレ広場に移設されました。そのあとからオベリスクが建てられたことになります。
 また、オベリスクの手前には大きな水盤がありますが、もとはフォロ・ロマーノのディオスクーリ神殿に置かれていたもので、19世紀にこちらに移設されたものです。

撮影メモ:
 クイリナーレ広場はかなり大きな広場なのですが、クイリナーレ宮殿で行事が行われていない時には、この広場には観光客はほとんど居なくて閑散としています。なお、クイリナーレ宮殿の正面は南西側を向いているため、宮殿の前に建っているこのオベリスクも東西南北の方位からかなりずれた方向に向いています。下記の写真では北西、南西、南東、北東と表記しています。

quirinale_ne.jpg
北東面

quirinale_nw.jpg
北西面

quirinale_sw.jpg
南西面

quirinale_se.jpg
南東面

2016年5月3日 撮影:長瀬博之 (画像をクリックすると高解像度の画像が見られます)

共同著作・編集: 長瀬博之 nagase@obelisks.org、岡本正二 okamaoto@obelisks.org